Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
私は二等の方が乗客が少なく、したがって知人にあうプロバビリティが少ないと判断して、二等の切符を買ってきたのであるが、いざという時になって、ふっと気が変わって三等に、しかも一番こみあっている箱を選んで、それに乗った。それは、乗客が混んでいれば、たとい知人と同乗しても、発見される恐れが少ないと気がついたからだ。
ところが、人間の浅はかな知恵などは、偶然の前には何の力も権威もないものであることがすぐわかった。一体これがあり得ることだろうか? もちろん誰一人信ずる者はないだろう。私だって他人からこんな話を聞いたらふふんと鼻で笑ってやるつもりだが、事実だから書かないわけにはゆかない。私の立っているところから、ちょうど六人目、あるいは七人目だったかも知れぬが、とにかく、つい鼻の先に、彼方側を向いて、吊革につかまって立っている女の後姿に、私の眼は釘付けにされてしまった。顔は見えなかった。けれども大体の丈格好といい、髪の結びかたから、素首の辺の髪の生えぎわから、着物の柄にいたるまで、妻のみな子にそっくりなのだ。私は、その場で自分の身体がそのまま結晶してしまいはしないかと思われるほど驚いた。