Japanische Klassiker mit Furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 61.953 Zeichen · 124 Bildschirme
彼はどうして、時々ああ云う風に物の真実を見られなくなるか、自分は、すぐ、真個に愛して居るものは、斯うか、と思わずには居られなくなるのだ。そしてその疑は自分を食う。Aも仕舞いに涙をこぼしてしまった。涙をこぼすほど強く感情に訴えなければ、ああ云う時、彼は真個の心持になれないのだろう。床に入ってから、Aにしっかり抱かれて顔を見て居乍ら、自分には不思議な疑いが生じて来た。其は斯うだ。人間の一人の男に、一人の女が此程に執着する……小さい範囲……然し此の熱烈さ……何故? 其程人間は愛を得ずには生活されないのだ。然し、その愛とは何か決して見えるものではない。只信仰によってのみ感じられるものなのだ。貴方を愛す、お前を愛す、然しどうしてその強さと量とを表し得るか、心の恐ろしさ。形で人間が表し得るのには限りがある。愛し合い、たしかに愛し合って居ると信じるものが、時々、断崖に面したように、今まで確実だと思って居た愛を疑う、と……その恐ろしい危機は、一生に幾度来るか、其時何方が真実を欠いても、結合は破れる。その危機は人間の本質的なものなのか、又は単にムードなのか?
自分が自ら愛の宣言をしたものほど此の恐愕は大きい。