Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
ただ足の下でごとごと鳴っている機関の音だけだ。これほど単純なことがあろうか。このとき人は誰だってそれぞれ哲学者になってしまうのだ。波、月、雲――私は長谷川の机の隅で、おでんを突ついている人々の顔をふと思い出した。今これらの友人たちの顔の前へ現れたら、恐らくこんな人もいたのかとぼんやりすることだろう。帰ろうにも行こうにも丁度今は半ばのところだ。どっちに転んでも同じものなら一つこの海へと思うものは思うにちがいない。海上の不思議さは地上の不思議さと反対な錯覚に満ちているものだ。海上の理智というものは、地上の理智を応用して出来ている不安定なものにすぎない。後は茫々たる雲のような真実ばかりだ。これに触れれば死ぬ決心など容易なことだ。まことにこのあたり不思議な恍惚状態の連続である。見果てぬ夢そのものだ。わけの分らぬ溜息のごときものばかりで全身がつつまれる。
洋上から押し襲って来ている感覚は僅に持ち込んで来た荷物みたいな地上の理智というものを、ときどき批判するものだ。ここでは理智が感覚を批判するのじゃない。さかさまだ。こんな眼に毎日毎日出喰しておれば少しは気違いじみてくる。