Japanische Klassiker mit Furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme
それが例の娘でないことは一目で分りましたが、しかし、その外の何人であるかは、少しも分りません。そこには女のくびから下が、鏡の隅によって、ボンヤリと映っているに過ぎないのです。からだの肉つきから判断すると、どちらかといえば若い女の様に見えます。今湯から上って、顔でもふいているらしい恰好です。
と、突然、女の背中で何かがキラリと光りました。ハッとしてよく見ると、実に驚くべきものが、そこにうごめいているではありませんか。鏡の隅の方から、一本の男のらしい手が延びて、それが短刀を握っているのです。女の丸々とした身体と、その手前に、距離の関係で非常に大きく見える、男の片腕とが鏡面一ぱいに充ちて、それが水族館の水槽の様に、黒ずんで見えるのです。一刹那、私は幻を見ているのではないかと疑いました。事実私の神経は、それ程病的に興奮していたのですから。
ところが、暫く見ていても、一向幻は消えないのです。それどころか、ギラギラと異様に光る短刀が、少しずつ少しずつ、女の方へ近づいて行くのです。男の手は、多分興奮のためにでしょう、気味悪く震えています。女はそれを知らないのでしょう、じッと落ついて、やッぱり顔を拭いている様です。