Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こはんていじけん

湖畔亭事件

江戸川 乱歩

Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme

Aozora Bunko

も早夢でも幻でもありません。疑いもなく、今浴場で殺人罪が犯され様としているのです。私は早くそれを止めなければなりません。しかし、鏡の中の影をどうすることが出来ましょう。早く、早く、早く、私の心臓は破れる様に鼓動します。そして、何事かを叫ぼうとしますが、舌がこわばってしまって、声さえ出ないのです。

ギラリ、一瞬間鏡の表が電の様に光ったかと思うと、真っ赤なものが、まるで鏡の表面を伝う様に、タラタラと流れました。

私は今でも、あの時の不思議な感じを忘れることが出来ません。一方の部屋では、景気づいた俗曲の合唱が、太鼓や手拍子足拍子で、部屋も破れよと響いています。それと、私の目の前の、闇の中の、ほの白い鏡の表の出来事とが、何とまあ異様な対照をなしていたことでしょう。そこでは、白い女の体が、背中から真っ赤なドロドロしたものを流しながら、スーッとあるき去る様に鏡の表から消えました。いうまでもなく、そこへ倒れたのでしょうけれど、鏡には音がないのです。あとに残った男の手と短刀とは、暫くじっとしていましたが、やがて、これも又、あとじさりをする様に、鏡から影を消してしまいました。