Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「意外なこともあるものじゃ。真実、勝頼公が世におわすとすれば、武田のご武運もつきませぬところ、若君のよろこびはいうもおろか、われわれにとっても、かようなうれしいことはないが……」
つぶやきながら軍扇をついて、ふかく考えているのは小幡民部である。しかし、加賀見忍剣や龍太郎やまた咲耶子にいたるまで、みなこの報告を天来の福音ときいて武田再興の喜悦にみなぎり、春風陣屋にみちてきた。
「京都へまいろう! そうじゃ、すぐ京都へまいってお父上にめぐりあおう!」
なかにも伊那丸は、おさなくして別れた父、なき人とばかり思っていた父――その父の存命を知っては、いても立ってもいられなかった。
「民部、わしはこれよりすぐに京都へまいるぞ、そしてお父上を小太郎山へおむかえ申さねばならぬ」
一刻のゆうよもならずと立ちあがった。
「しばらくお待ちあそばしませ」
いつも思慮ぶかい小幡民部、しずかに、伊那丸の裾へよって両手をついた。
「民部、そちはわしの孝心をとめるのか」
「なんとしてお止め申しましょう。若君のお心、そうなくてはならぬところでござります。しかしようお考えあそばせ、元来、徳川家には策士の伝言多く、虚言浮説は戦国の常、にわかにそれをお信じなされるもいかがかとぞんじます」