Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
Lesen Sie 神州天馬侠 (しんしゅうてんまきょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 511.765 Zeichen · 1011 Bildschirme
「火をつけるな、松明をほうるな」
そこでは伊部熊蔵がさけんでいる。
「焼城をとるのは手柄が小せえ、生城をとるのは大武功としてある。どうせもうこっちのものになる城だ、向こうの火もはやく伏せろ伏せろ」
と、火薬から燃えひろがりそうな奥郭へザッザと水をかけさせている。
一方では二十人ほど、手をわけて咲耶子のゆくえをさがし、また一方では鼻かけ卜斎が、腰に手をあてて城塞のつくりを、しきりに見てまわっている。
と、れいの扇縄の水の手に、だれかかがみこんで、ザブザブと顔を洗いながら、ついでに、口を水面へのばして、チューッと吸おうとしているやつがある。
見ると、泣き虫の蛾次郎だった。
「ばかッ」
卜斎にどなられて、蛾次郎は、すいこんだ水を思わずガッと吐きだして、
「親方……?」
と、叱られるのをけげんそうに、
「な、なにが、ばかなんで」
「毒水だぞ、それは」
「げッ」
「すべて城をのっとったさいには、そこらに残っている食糧や水はけっして口にすべきものじゃあない」
「ヘエ、そうでしょうか」
ペッ、ペッ、口のつばきを吐きちらして、こんどは、洗いかけていた焔硝いぶりの顔のしずくを両方の袖で拭きまわしている……。