Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「ほかに何かあるとお思いになる?」
泰造はだまった。伸子は直感するのだった。期限つきの旅券のことから、泰造はまた伸子の「思想」について気にしているのだ、と。泰造の感情に、また赤インクのかぎが、あらわれそうになっているのだ、と。
「お父様、ほんとに心配なさらないで頂戴――。どこをさがしたって、わたしにはそれよりほかの理由はなくてよ」
「それならいいがね――しかし……」
泰造は、ソフトをぬいで、重い、禿げた頭を曰くありげにふった。伸子は、泰造を安心させるために云った。
「イギリスは、日本とちがうのよ、お父様。共産党だって、ちゃんと公然の政党よ。新聞も出ているし、選挙にも立っているんですもの。――コンミュニストだったにしろ大威張りなわけなのよ。――わたしはそうじゃないけれどもさ……」
多計代やつや子より一足さきに、泰造が伸子を散歩につれ出したわけがわかった。
喫茶店の派手な日除傘が見える道まで来たとき、泰造は、ちょいと足をとめるようにした。
「お前に、佃君が亡くなったことを、しらせたっけか」
「――いいえ」
佃が死んだ――しずかな声で、いいえと云った伸子の、うすい絹服をつけた体の外側にだけ八月末のロンドンの暑さはのこって、おなかのしんをすーとつめたいものがはしった。