Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子の過去に一つのピリオドがうたれたとき、伸子は知らないままに伸子の新しい生涯の日々を歩みはじめていたのだった。
両手で顔をおおいながら伸子は夜の公園に開いている窓の前に膝をついていた。熱心に生きようとしている自分の命ひとつのなかに、いくつの命が、綯いあわされて来ただろう。死んだ弟の保の、若くて柔かい、いとしい命。佃というひとの、暗く、ぎごちなくて、しかし嘘はつかなかった命。つよい生活への欲求のなかで、死んだ人々は生きている。そのことが伸子の胸をしめつけた。彼とのことは完結したのだ。その自覚から生れた、思いがけない解放感。――佃との間にあったすべての経験は、これまでよりもっと自由に、生きてゆく伸子の生のうちにうけいれられたと感じられる。両手で顔をおおうている伸子の眼からは涙がこぼれないで、体じゅうがかすかに震えた。熱でもでる前のようにふるえている伸子をつつんで、あけはなされている窓から流れこむ夏の夜の濃い樫の葉が匂った。
二
素子がさきにモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ帰ったことは、ロンドンでの伸子に、五年ぶりのひとり暮しをもたらした。