Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
落葉のちっている古い歩道に、男の靴音と女靴の小さい踵の音とをまじえて歩きながら、伸子は、
「なかなか住めるってところはないものなのね」
複雑にゆすられたこころもちを、室さがしという話の幅におさめて、蜂谷良作に云った。こういう風に室さがしをやりはじめて、伸子は、二人でさえあれば、どんなところにでも住めるのに、と思うことが多かった。二人でさえあれば、と云って、その二人のうちの自分でないもう一人は、伸子にとって現実のどこにいるのでもないのだった。
「室さがしなんて、大体こんな工合のものなんですよ」
蜂谷良作と伸子はセイヌ河の古本屋通りへ向ってゆっくり歩いた。
「たった二日歩いたぐらいで飽きたんじゃあ、室さがしは出来ない」
「飽きなんかしないけれど……」
つまりは、現在いるところがあるからだ、と伸子は思った。
伸子は、けんかしたあとも、夜はきちんとホテルへ帰って、そこで寝た。ペレールから伸子が歩いてホテルへ戻るのは大抵夜の十時か十一時で、マネージャーの親爺はその時刻に、帳場にいることもあり、いないこともありだった。いたにしても、伸子が正面のしゃれた模様入りのガラス扉をあけると、そこから入って来るのが伸子だということをとうに知ってでもいたように、決して入口に顔を向けず、帳簿つけのようなことをやっていた。