Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
蜂谷に深い傷をつけようとするように唇を圧しつけさせた――そこに伸子のおどろきがある。わからなさがある。ヴェルダンの夜、死の都のうす暗いカフェーで、あのように自分を苦しくしていた抗議の感情、欺瞞にいきどおっていた感情、それらの激情の底まで浸りたいと願っていた感情――ヴェルダンへ泊りたいと云った伸子のこころもちと、それをきいてひそかにあわてた表情になった蜂谷良作の気持との間に、くいちがいがあった。蜂谷良作と伸子の要求はくいちがいのまま、その流れを流れて、瀬におちかかろうとしている。男と女の瀬に――。だけれども、これが恋だろうか。愛でない恋――伸子には、わからない。
蜂谷良作が、感情の投げ繩を投げることにだけ熱中していて、しきりに繩を投げながらも動こうとしないで立っている自身の位置――彼の生活と思想がたっているところ――に目を向けないでいることも、伸子をわからなくする。しかし、蜂谷の投げ繩は伸子の体すれすれにとどいたし、蜂谷の知らない瞬間に全く伸子の感覚をとらえていることがある。たとえばこんなとき――
ベルネの食堂のテーブルで、例の煖炉よりの側に蜂谷良作が、ドアよりに伸子がかけておきまりの勉強がはじまっている。