Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
この反物売の支那人は、
「ジョーチャン、こんにちは」
と、いつも伸子に笑って挨拶した。玄関の畳の上へあがって、いろいろの布地をひろげた。父が外国へ行っていて経済のつまっている若い母は、美しい支那の織物を手にとって眺めては、あきらめて下へおくのを根気づよく待って、
「オクサン、これやすい、ね。上等のきれ」
などと、たまには、母も羽織裏の緞子などを買ったらしかった。この支那人の躯と、反物包みと、伸子の手のひらにのせてくれた落花生の小さな支那菓子とからは、つよく支那くさいにおいがした。子供の伸子が、支那くささをはっきりかぎわけたのは、小さい伸子の生活の一方に、はっきりと西洋の匂いというものがあったからだった。たまに、イギリスの父から厚いボール箱や木箱が送られて来ることがあった。そういう小包をうけとり、それを開くことは、母の多計代や小さかった三人の子供たちばかりか一家中の大騒動だった。伸子は、そうして開かれる小包が、うっとりするように、西洋のいいにおいにみちていることを発見していた。包装紙の上からかいでも、かすかに匂うそのにおいは、いよいよ包が開かれ、なかみの箱が現れると一層はっきりして来て、さて、箱のふたがあいていっぱいのつめものが、はじけるように溢れ出したとき、西洋のにおいは最も強烈に伸子の鼻ににおった。