Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
――ゴーギャンだってさ――あんなひどい一生だったのに。世界の金もちだけよ、いま、ゴーギャンを買えるのは」
伸子と素子とはメトロのステーションの段々を降りて行った。例によって改札口のあたりには、白く、黄色くすてられた切符が散乱している。
午後の中途半端な時間で、プラットフォームはきわめて閑散だった。伸子たちは、壁にモザイクで、新橋とステーションの名を書いてあるあたりで立っていた。素子がタバコでもつけたそうに、ちょいと落付のない表情を目の中に浮べたときだった。不意に、
「畜生!」
小声で、歯と歯の間から叫んで、素子は素早く自分のうしろをふりむいた。同時に、片手をうしろにまわして、何かを払うようにスカートを撫でおろした。
「しりなんか撫でやがって!」
「?」
滑稽さと意外さとで、伸子は、自分もうしろをふりかえって見た。誰が、そんなことをしたんだろう。伸子たちの近くにはそれらしい者は一人もいなかった。すこしはなれたところにソフトを斜かいにしてかぶった中年の背の高い男が二人づれで佇んでいた。二人とも、タバコをふかして、全く何気なくこっちを見ながら話している。
「――変ね。