Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
須美子が、表情も声の調子もかえないいつもの静かさで自分の絵に見入りながら、ホノルルの二週間がわたしの一生のうちで一番幸福なころだったのかもしれない、と云ったことは、伸子の心の底をはげしくついた。まだはたちを少しでたばかりの、こんな美しさと能力をもっている須美子が、四年前にすぎたホノルルの日を、そんなにはっきり、一生で一番幸福だった時かもしれない、と、パリの灰色の室の中で云うとは、どうしたことだろう! 伸子は、須美子のために非常に切ない心地がして来た。須美子よりいくつか年上の伸子は、自分が須美子のように隠された不幸感を毎日のうちに持たずに暮していることを、鋭く自覚したのだった。
「どっちみち、須美子さんは絵をお描きにならなくちゃいけないわ。赤ちゃんを描いておあげなさいよ、きっと素晴らしいわ」
この生活にさらされたようなパリの室のむき出しの壁を背にして、ふわりとした白い服の赤坊が須美子の筆致で描かれたら、どんなにおもむきが深いだろう。伸子は、しんからそう感じて云ったのだった。けれども、須美子は、いくらか体をかたくしているような静けさのまま、
「わたくしは駄目よ」