Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
ふらりと伸子の室へはいって来た素子を見て、
「ひるねしていたんじゃなかったの」
寝台のまんなかに仰向けに臥て、頭の下に両手をかっている伸子がきいた。
「ぶこは? ねたのかい?」
「ねたというほどはねないわ。――でも、暑いわねえ」
「七階だからさ。屋根からやきつけてくるんだもの。涼しかろうはずはないさ」
伸子は、五月二十日ごろ神戸を出た欧州航路の船はいまごろ、どの辺を通過しているだろうと考えていたのだった。地中海に、はいっているだろうか。それともその手前のスエズ辺だろうか。母の多計代は日本服で旅行に出て来ているから、帯がどんなに厄介で、暑いだろう。夏になると毎年東京をはなれて暮していた多計代のことを思い出し、いくら乾燥していてしのぎよいと云っても夏のヨーロッパへ出かけて来たことについて、伸子は、はじめてまじめな心配を感じもするのだった。
「わたし、うちの連中のことを考えていたの。――やがてもうそろそろよ」
伸子は、寝台の上におきあがって、坐って、小さな苦笑を唇の上に浮べながら素子に云った。
「えらいさわぎになるでしょうが、どうかあしからずね」
ちらりと眼をそらすようにして素子が、