Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
それはモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)という都会の生活について、そこでの社会主義への前進について、伸子が深い現実を知った結果からだったろうか。それとも、ここで見られる歴史の現実も、伸子にとっては新鮮に感覚に訴えて来る範囲でしか、把握出来なかったからの結果だろうか。伸子はそういう点一切を自覚していなかった。
日々を生きている伸子の感興は、耳目にふれる雑多な印象と心におこるその反響との間をただ活溌にゆきかいしているばかりだった。
しばらくだまって休んでいた素子が何心なく腕時計を見て、
「ぶこちゃん、また忘れてる! だめだよ」
と、あわてて、とがめるような声をだした。
「なにを?」
ぼんやりした顔で伸子がききかえした。
「室代――」
「ほんと!」
「きのうだって到頭忘れちゃったじゃないか。――すぐ行ってきなさい、よ!」
伸子は、テーブルをずらして、日本から来た新聞の山の間に赤いロシア皮で拵らえられた自分の財布をさがした。ホテルの室代を、毎日夜十時までに支払わなければならないきめになっていた。伸子たちはよくそれを忘れて、二日分ためた。ほんとうは、いくらか罰金がつくらしかったけれども、素子や伸子がホテルの二階にある事務室へ入って行って、忘れてしまって、と二日分の金を出すとき、罰金はとられたことがなかった。