Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
劇場のはねるのを目あてにして来てあぶれた辻待橇が一台、のろのろ、伸子たちの歩いて来る方向について来た。伸子は、足もとのあぶなっかしさよりも、寧ろはげしくゆり動かされている心の支えが欲しい心持から、茶色外套をきている素子の腕にすがった。
「そんなに寒いの?」
ぴったりよりそって歩いている伸子の体のかすかな顫えに気がついて、素子が不安そうに訊いた。
「そうじゃないのよ、大丈夫!」
上気している頬に粉雪を快く感じながら、何となく顫えの止らないような芝居がえりのこの心持――伸子は、十六七のとき、上目黒のある富豪のもっている小劇場で、はじめてストリンドベリーの『伯爵令嬢ユリー』を観た晩のことを思い出した。それは、伸子がみた最初の新劇だった。伯爵令嬢ユリーの恋は、なんと病的で奇異だったろう。鞭が、何とぞっとする音で鳴ったことだろう。しかし、伸子は何とも云えないその芝居全体の空気から亢奮して、うちまでかえる俥の中で顫えた。木立のなかに丸木小舎めかして建てられていたその小劇場。喫煙室に色ガラスのはまった異国風なランターンがつり下げられていた。そこに立ったり腰かけたり、密集してタバコをのんだり、談笑したりしている大学生や文学、演劇関係の人々。