Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
まだごくひよわいところのある恢復期の病人が、微かなすき間や気温のちがいに過敏すぎるとおり、伸子は人々の間に交って食卓に向っているようなとき、何か自分でさえわからないきっかけで、不意に「八月一日」とはっきり思うことがあった。するとたちまち悲哀のさむけが伸子の全身を顫わせた。何心なくものをのみ込もうとしているとき、前後に何のつながりなくいきなり、保は死んでしまった、と思うことがあった。古くなって光った制服の太い膝をゆすったり、紺絣の着物の膝をゆすっているときの保、柔かい和毛のかげをつけた若いおとなしい口元、重いぽってりした瞼の形、可愛い保の俤は迫って、伸子はものをのみこむどころか息さえつまった。伸子の悲しみは体じゅうだった。その体に風が吹いても悲傷が鳴った。
喪服をつけるというようなことを思いつきもしなかった伸子は、相かわらず白麻のブラウスにジャンパア・スカートのなりで、素子の腕につかまりながら、ほとんど一日じゅう戸外で暮した。結局たれ一人、保が生きられるようにはしてやれなかった。この自責が伸子をじっとさせておかないのだった。ひとはてんでに、生きるようにして生きている。