Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
その遺書の中に、生きるためだけに生きるみじめさ、と書かれた観念は、全く同じ内容ではないにしろ、保の日頃の考えかたと符合していた。あのとき、伸子はそのことを考えて不安だった。相川良之介の葬儀のかえり動坂へよったら、保が、涼しいからと云って土蔵の地下室を勉強部屋にしていた。そのことも、不吉感として迫った。その不吉感がつよいだけに却って伸子はこわくてそれを母にも素子にも云えなかった。きょうとなってみれば、予感にみたされていたのは一番自分だった。伸子は自分にさしつけられた事実としてそれを認めた。だのに、自分はつまるところ保のために何もしなかった。自分はソヴェトへ来てしまった。――自分が生きるために。
自分の悲しみに鞭をあて、感傷の皮をひっぺがそうとするように、伸子はきびしく先をよんで行った。父の手紙には、悲歎にくれる多計代の姿はひとつも語られていなかった。桜山へ行った青年から保が来ていないかときかれて、あることを直覚した母は、つづけて届いた保キトク、保シキョの電報を、むしろ落付いてうけとった。母は急遽つや子同伴、桜山より帰京した。その夜は、清浄無垢な保に対面するには心の準備がいるとて一夜を寝室にこもり、翌朝はやく紋服に着かえ、保の柩の安置されている室へ入った。