Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
それでも吉之助たちのベルリン行の計画は歌舞伎がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)での公演を終る前後には実現の可能が見えて来た。
「見てきます」
吉之助は俳優らしさと学生らしさのまじりあったような若い顔を紅潮させた。
「そしてまたかえりにここへちょいとよります、こっちはないしょですが……」
と健康そうな白い歯を見せて笑った。ソヴェトへ来て、自分というものは一つところに置いたまま、見聞ばかりをかき集めてもって帰ろうとするような人たちとちがって、吉之助や中館公一郎の態度は、伸子に共感を与えた。吉之助がふるい歌舞伎の世界のどこかをくいやぶって、自分を溢れ出させずにはいられなくなっている情熱。中館公一郎が映画監督として、自分の持てる条件を最大限まで押しひろげて見ようとしている目のくばり。そんな気持はどれもはげしく明日に向って動いている心であり計画であった。明日は、明日に杙をうちこんで前進してゆこうとしているこれらの人たちの生活気分は、保が死んでからソヴェト社会へつきささった小さいくさびのように自分を感じている伸子の感情にじかにふれた。
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来た歌舞伎は、そのふるい伝統の底から思いがけない新しいもの、種子を、そうとは知らず後にのこして、好評をみやげに日本へひきあげた。