Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
一途な、子供らしい恋愛の経験しかない伸子は、ぱらりとした目鼻だちの顔に切迫したような表情をうかべて、スタンドのクリーム色の光の中から素子を見あげた。
「あなた、本気なら、話してみたら?」
「…………」
「じゃ、わたしが話す?」
素子はだまったまま、葡萄酒をのみ、スタンドのかさのまわりでタバコの煙がゆるやかに消えて行くのを見まもっている。じゃ、わたしが話す? 思わずそう云って、伸子は、当惑した。素子に対して吉之助がどう思っているか、知りようもなかったし、仮に、互の間にいい感情があったにしろ、吉之助の歌舞伎俳優としてのこまごました生活の諸条件と断髪で洋装の素子とはどうつながるものなのだろう。素子が吉之助にひかれるのはわかるけれど、二つの生活の結びつく現実的な必然が見つからなくて、伸子はとまどう心持だった。
当の素子よりも解決にせまられているような伸子の表情をいくらかぼっとしたまなざしで眺めていた素子はやがてゆっくり、
「まあ、いいさ」
とひとりごとのように云った。そして、給仕をよんで勘定をさせはじめた。
歌舞伎がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)からひきあげ、吉之助たちがベルリンへ行って二週間とすこしたったある朝のことだった。