Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

と素子にたずねた。

「誰から?……藤原からかい?」

「私にちょっとそんなこと云ってよ。――もし来るときまったらわたしを診てもらうようにするって母が云っていたって」

「へえ――知らないよ。佐々のお父さんと同郷とかっていう、あの吉沢さんかい?」

「聞いたことがあった?――吉沢さんでも来ればいい」

伸子は、自分の病気を診てもらうもらわないより、せめて自分の病室へは藤原威夫のようなものでない普通の人、天皇のこととか伸子の思想のことだとか云わないあたり前の人に来てほしかった。

その夜は、二つばかりさきの小病室から終夜病人の呻り声がこちらの廊下へまできこえた。伸子が入院してから平穏がつづいているその病棟にはじめてのことだった。その呻り声は、はじまった病気の苦しみというよりも、死ぬ間際のうめきのようにきこえた。婦人病棟だのに、その呻り声は高く低く男のようにしわがれて、ドアの外の廊下を看護婦や当直医の往来する足音がした。

あたりがふっと静まったときまどろみかける伸子は、じきまた聞えて来る呻り声で目をさまされた。さめた瞬間、伸子の心は沈んでいて昼間の印象がこびりついている自分に気づくのだった。