Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「へえ。だって今更――おかしいじゃないか」
素早く頭を働らかせて状況を判断しようとする眼の表情で言った。
「きのうきょうここへ来た人間じゃあるまいし」
「そう思うでしょう? わたしもわからなかったの。でもよく考えてみたらね、御利益があらわれたわけなのよ」
「御利益?……なんのさ」
「陸軍少佐藤原威夫の」
「そうか――なるほどね」
素子はうめくように承認した。
「だって、そうとしか考えられないんだもの。わたしたち、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来てはじめてだわ、こんなこと」
伸子は自分の推測を最も現実に近い事情として信じた。それにつけ、考えれば考えるほど歎けて来るおももちで伸子はしょげ、
「ほんとに、母ったら!」
おこってもまに合わないという風に気落ちした顔を窓に向けてだまりこんだ。
そのころ、ソヴェトでは、はっきりした目的や理由がないと国外旅行を許可しなかったし、旅行のために国外へもち出せるルーブリの額にも制限があった。伸子たちは、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)から出かけた先のどこか便宜な場所で、伸子は文明社からの送金を、素子は東京の従弟にまかせて来ている送金を受けとることができる手筈をととのえておく必要があった。