Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

うちのお隣りはロスチャイルドの御親戚なんですよ。そう云わないだろうか。そういう召使自身はポーランド人であり、旧市街へは足もふみ入れたことがない、ということを誇りとしていることもあり得るのだ。そのようにあり得る現実を伸子は嫌悪した。

馬車は馬の足並みにまかせてゆっくりひかれてゆく。美しい糸杉の生垣の彼方に黄色いイギリス水仙の花が咲きみだれている庭があった。その美しい糸杉の生垣も早咲きのイギリス水仙の花も、繊細な唐草をうち出した鉄の門扉をとおして、往来から見えるのだった。まるで、ここにある人生そのものを説明しているようだ、と伸子は思った。その人生は、旧市街のくさい建物につめこまれている夥しい人生とはちがうし、伸子が名を知らないあの陰気な広場へ赤旗をもって行進して来た人々の人生ともちがう。そして、糸杉と黄水仙のある人生は、それが無数の他の人生とちがうことについて満足している。――

伸子はかたわらの素子を見た。素子は火をつけたタバコを片手にもち、手袋をぬいだもう片方の指さきで、舌のさきについたタバコの粉をとりながら、馬車の上から、とりとめのない視線を過ぎてゆく景色の上においている。