Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
川辺みさ子が糸桜の肩模様の美しい上半身をグランド・ピアノへぶつけるようにしていくつかの急速に連続するコードをうち鳴らしたとき、彼女の髪のうしろからとんだ櫛はステージの上にはずんでおちて、ころがった。瞬間の満足感が聴衆の間を流れた。
演奏はつづけられたが、伸子は、どうせとんでしまうものならステージへ出る前に、なぜ櫛なんかとって出て来ないのかと、川辺みさ子自身の趣味をうたがった。伸子がごく若い娘の作家であることを娘義太夫にあつまる人気になぞらえて、娘義太夫のよさは、見台にとりついてわあーっと泣き伏す前髪から櫛がおちる刹那にある、佐々伸子にこの味が加ったら云々と書かれていたのを読んだことがあった。伸子はそれを忘れることができず、意識してそれに類するどんなその注文にも応じまいとかたく決心していた。伸子のそのこころもちは、川辺みさ子の演奏会と云えばステージにおとされる櫛を期待させているような点に伸子を妥協させないのだった。彼女の天才主義に疑問をもちつづけた伸子は、櫛のことから、芸術家としての川辺みさ子と自分のへだたりを埋めがたいものとして感じた。稚いながらも川辺みさ子に対しては伸子も一人の芸術にたずさわるものとしての主張をもちはじめていた。