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Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

それは単衣の季節だった。はかばかしい喪主もなくて、まばらに人の坐っている寺の本堂を読経の声とともに風が通った。遺骨は、錫製のスープ運びの罐のようなものに入れられていた。その罐に外国語でタイプされた小さな貼紙がついていた。京都に埋められる遺骨の一部を東京にのこすために分骨するとき、こころを入れてその日の世話を見ているたった一人の弟子であった土井和子の貴族的な美貌の上をいくたびも涙がころがって落ちた。――おかわいそうに。土井和子は真実こめてそうささやきながら骨をひろった。伸子は、土井和子の誠意にうたれ、謹んでかたわらに坐っていた。川辺みさ子その人に対して芸術家としての疑問や異種なものである感じは、死によっても伸子の心からは消されなかった。伸子はそのころ佃との生活紛糾のただなかにいて、自分にもひとにも鋭く暗い気分だった。

音楽という広いようで狭い世界では、ウィーンと日本との距離がはたで思うよりはるかに近いものであることを、こんどウィーンに来て見て伸子は実感した。当時川辺みさ子の評判やそれに対する期待、好奇心は、おそらく川辺みさ子そのひとが、ウィーンに現れるよりさきまわりして、彼女の登場の背景を準備していたことだろう。