Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「わたくしは、たった二週間前に、日本から来たばかりです。わたしは、ロシア語が話せません」
すかさずうしろの方から、響のいい年よりの男の声で、
「結構、話してるよ」
というものがあった。みんなが笑った。壇の上にいる伸子も思わずほほ笑んだ。そして、その先何と云っていいか分らず、しばらく考えていて、
「日本の進歩的な労働者は、あなたがたの生活を知りたいと思っています」
と云おうとした。しかし、それは伸子の文法の力に背負いきれず、伸子の云おうとしたことが、ききてに通じなかった。伸子はそれを感じて、
「わかりますか?」
と、みんなに向ってきいてみた。伸子の真下で第一列にいた中年の女が、すぐ首を横にふった。伸子は困ったが、こんどは単刀直入に、
「わたしは、あなたがたを、支持します」
と云った。さっきの年よりの男の声がまた響のいい声で答えた。
「こんどは分った!」
そして、盛な拍手がおこった。
これは伸子にとって思いがけない経験であった。同時に、伸子をモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の心情により具体的に結びつけた出来ごとでもあった。
敏感な素子は、学問として学んだロシア語の知識で、かえって、闊達さをしばられている状態だった。