Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

ている方角へ眼を向けた。すると、その顔も伸子が伸子であることを間接に認めたらしく、視線にかすかなほほ笑みの影をうつした。その表情で、顔は一層写真にある父笹部準之助の顔だちに近くなるのだった。

伸子は風に吹かれるように異様な心持につつまれた。ベルリンのこの人ごみで、伸子をこんなに衝撃する笹部準之助の顔が、つまりは顔だちばかりのもので、生の過程そのものは二度と父であり得ない息子のものだということは、何ときびしい暗示にみちた現実だろう。その顔が、いま伸子の見ているところでどことなく気弱そうに人波にもまれ、ある瞬間には見え、次の瞬間にはまたかくされて、見えがくれしている姿も、伸子に人生というものを感じさせずにいない。

伸子は、あんまり父そっくりな顔だちをもって生れた笹部準之助の息子にいたましさを感じた。彼は彼の顔からにげ出すことは出来ないのだ。その顔は、ベルリンにいようとロンドンへ行こうと、そこに日本人がいて、その日本人が笹部準之助という名を知っているかぎり、写真を見おぼえているかぎり、この親の立派な顔だちをうけついだ青年のぐるりに一応は、父の文学への連想によって調子のつけられた環境がつくられてしまうにちがいないのだ。