Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
和一郎が学生であったころ、親たちと伸子との間におこった数々の衝突や争いを、今夜の話の内容と比べれば、どちらの側にも打算がなくて若々しく、さっぱりしたものだった。伸子は、悲哀をもって、佐々の家庭にも新しい局面がひらかれたことを感じた。
「お母様、よく覚えていて頂戴。わたしはもうこれから決して、お母様と和一郎さんとのお金の話には立ち入らないことにきめてよ。こんどは、偶然あんなことで仕方がなかったけれど……。こんどだって、お母様が思っていらっしゃるよりも和一郎が云い出した心持は根が深いと思うから、わたしは実際的に処置した方がいいと思っただけなんだから」
「――何も彼も、わたしが行届かなくて、相すまないことだよ」
多計代は、あからさまな反語の抑揚でそう云った。
「どこの親が、ためあしかれと思って苦労するものか! 子供も生んだことのないひとに親の気持がわかってたまるものか」
伸子は三十歳になって、現在良人をもっていない。子供ももっていない。母である多計代は、女として伸子が、そこにひけめをもってでもいるように、その一点を狙って放った銛のように云って椅子から立ち上った。