Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.130 Zeichen · 288 Bildschirme

Aozora Bunko

謎のような言葉を残したまま、鉄童は手桶を提げて庵室へ入って行きました。

もういちど表へ廻ると、信心の男女は大方散って、庵主の鉄心道人が、若い男と何やら事務的なことを打合せております。

「越後屋の兼松だよ」

三つ股の源吉はそっと囁きました。雑司ヶ谷から音羽へかけての物持で、手広く米屋をやっている兼松は、鉄心道人の第一番の大檀那で、庵室を建ててやったのも、諸経費の不足を出してやるのも、みんなこの男の篤志だということです。

「越後屋さん、銭形の親分が、道人に少し訊きたいことがあるそうだよ」

源吉は兼松をさし招いてこう囁きました。

「それは困りました」

越後屋兼松は渋い顔をしました。この盲信者にとっては、岡っ引と鉄心道人とは、全く世界の違った人間のように思っている様子です。

「お上の御用を勤める方に不自由をさせてはいけない。私が逢いましょうよ、越後屋さん」

後ろから静かに声をかけたのは、鉄心道人でした。歳の割には若々しい声で、何でもないことがひどく人の心持に沁み入ります。八宗兼学の大智識というにしては、少し人間味がありすぎますが、柔かい次低音には一方でない魅力のあることは事実です。