Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 139.230 Zeichen · 280 Bildschirme

Aozora Bunko

「何?」

事の重大さに、喜三郎も平次も緊張しました。取上げて見ると、中は空っぽですが、ひどく真っ黒な泥の付いたのを、無理に擦って取った様子がありありと見えます。

「金五郎親方の裏口の藪に引っ掛っていたんです。――きのう一日誰にも見付けられないのが不思議なくらいでしたよ」

与八はすっかり観念しました。

「今ごろそんな細工をするようじゃ、油断がならない。――大急ぎで片付けよう」

平次は喜三郎を促します。

「財布は?」

喜三郎は念を押しました。

「勝手にさせるがよかろう。金五郎が下手人だとしても、自分の家の裏口へ空財布を捨てるか捨てないか、万七兄哥にも判らないことはあるまい。そいつは与八の手柄にさしてやるがいい。藪に引っ掛っていた財布に、真っ黒な泥がどうして付いたか、それが判りさえすればいいよ」

平次にそう言われると、こんな財布にこだわるのが馬鹿馬鹿しくなります。

与八の家は空っぽ。左側の金五郎の家を覗くと、娘のお美乃が一人、壁の方を向いて、何をするでもなく坐っております。

「お美乃」

喜三郎が声を掛けると、娘はわずかにこちらを振向いて目礼しました。

貧し気な様子の中に、たった一人取り残された十八になるお美乃は哀れ深くも美しい姿です。