Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

Lesen Sie 黄金仮面 (おうごんかめん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.357 Zeichen · 287 Bildschirme

Aozora Bunko

朽ちはてて、空家同然の地上の建物は、この地底の天国を覆い隠す、謂わばこの世の目隠しに過ぎなかった。

一つの長椅子に、恋する男女が、身をすり寄せて腰かけていた。

男は黄金の仮面、黄金のマントに身を包んだ例の怪賊。女は邸を抜け出す時の衣裳を相手に返して、派手な模様の和服姿になった大鳥不二子。

不二子は、美しい顔を、怪賊の肩にもたせかけて、うっとりと、異様なる恋に酔いしれていた。黄金仮面は、右腕を、不二子の背中に廻して、力強く彼女を抱きしめていた。

彼等は一言も口を利かなかった。口を利く必要がないのだ。恋に言葉は邪魔なのだ。彼等はただ、この甘き沈黙を破るまじと、吐く息さえもつつましやかに、身動きもせず、着物を通して感じられる、お互の肉体の、ほのかな感触に酔っていた。

彼等は少しも追手を恐れることはなかった。尾形老人は地上の怪屋をつきとめたけれど、その空家同然の怪屋の下に、この様な恋の天国があろうとは、誰が想像するものか。事実、大鳥家の人々は、同じ夜、地上の怪屋を家探ししたのだけれど、地下への秘密の入口を気附かず、賊はこの隠れ家を捨てて、別の場所へ移ったものと信じ、空しく引上げて行ったではないか。