Clásicos japoneses con furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lee 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 346.393 caracteres · 692 pantallas
「ただ今お帰りですよ。」
お庄は時々、こんな電話を向島の方の妾宅から受け取って、それを奥へ取り次ぐことがあった。
内儀さんは背の低い、品のない、五十四、五の女で、良人に羽織を着せる時、丈一杯爪立てする様子を、お庄は後で思い出し笑いをしては、年増の仲働きに睨まれた。
客の多い家で、老主人が家にいると、お庄は朝から茶を出したり、菓子を運ぶのに忙しかった。店の方を切り廻している三十前後の若主人や、その内儀さんも、折々来ては老人の機嫌を取っていた。縁づいている娘も二人ばかりあった。
年取った内儀さんは、よく独りで、市中や東京居周りの仏寺を猟ってあるいた。嫁や娘たちが、海辺や湯治場で、暑い夏を過すあいだ、内儀さんは質素な扮装をして、川崎の大師や、羽田の稲荷へ出かけて行った。この春に京都から越前まで廻って秋はまた信濃の方へ出向くなどの計画もあった。そのたんびに寺へ寄附する金の額も少くなかった。お庄は時々、そんな内幕のことを、年増の女中から聴かされた。
内儀さんは、家にいても夫婦一つの部屋で細々話をするようなことは、めったになかった。悧発そうなその優しい目には、始終涙がにじんでいるようで、狭い額際も曇っていた。