Clásicos japoneses con furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lee 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 346.393 caracteres · 692 pantallas
二十一
笹村は自分のことにかまけて、しばらくM先生の閾もまたがずにいた。先生と笹村との間には、時々隔りの出来ることがあった。
M先生は、笹村の胃がようやく回復しかけて来るころから、同じ病気に悩まされるようになった。
「今の若さで、そう薬ばかり飲んでるようじゃ心細いね。うまいものも歯で嚼んで食うようじゃ、とても駄目だよ。」
茶一つ口にしないで、始終曇った顔をしている笹村に、先生は元気らしく言って、生きがいのない病躯を嘲っていたが、先生の唯一の幸福であった口腹の欲も、そのころから、少しずつ裏切られて来た。
定められた病室へ入って、大分待っていると、やがて扉を開けて長い廊下を覗く笹村の目に、丈の高い先生の姿が入口の方から見えた。O氏とI氏とが、その後から手周りの道具や包みのようなものを提げて入って来た。
先生の目には深い不安の色が潜んでいるようであったが、思いがけない笹村の姿をここに見つけたのは、心嬉しそうであった。
二十一
腕車からじきに雪沓ばきで上って来たM先生は、浅い味噌濾し帽子を冠ったまま、疲れた体を壁に倚りかかってしばらく椅子に腰かけてみたり、真中の寝台に肱を持たせなどして、初めて自分が意想外の運命で、入るように定められた冷たい病室の厭わしさを紛らそうとしているように見えた。