Clásicos japoneses con furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lee 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 346.393 caracteres · 692 pantallas
四十八
ように、笹村はいつも落着きなく外を出歩いてばかりいた。
四十八
笹村は多勢の少い甥や姪と、一人の義兄とに見送られて、その土地を離れようとする間際に、同じ血と血の流れあった母親の心臓の弱い鼓動や、低い歔欷の声をはじめて聞くような気がした。するすると停車場の構内から、初夏の日影の行き渡った広い野中にすべり出た汽車の窓際へ寄せている笹村の曇った顔には、すがすがしい朝の涼風が当って、目から涙がにじみ出た。
笹村は半日と顔を突き合わして、しみじみ話したこともなかった母親の今朝のおどおどした様子や、この間中からの気苦労な顔色が、野面を走る汽車を、後へ引き戻そうとしているようにすら思えてならなかった。孤独な母親の身の周りを取り捲いている寂寞、貧苦、妹が母親の手元に遺して行った不幸な孤児に対する祖母の愛着、それが深々と笹村の胸に感ぜられて来た。
……まことに本意ないお別れにて、この後またいつ逢われることやら……門の外までお見送りして内へ入っては見たれど、坐る気にもなれず、おいて行かれし着物を抱きしめていると、鼻血がたらたら流れて、気がとおくなり申し候……
東京へつくと、すぐに、こんな手紙を受け取った笹村の目には、今日までわが子の坐っていた部屋へ入って行った時の、母親のおろおろした姿がありあり浮ぶようであった。