Clásicos japoneses con furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lee 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 346.393 caracteres · 692 pantallas
三十六
何だか、もと奉公していた家がなつかしいような気がした。始終拭き掃除をしていた部屋部屋のちんまりした様子や、手がけた台所の模様が、目に浮んだ。どこかに中国訛りのある、優しい夫人の声や目が憶い出された。出る時、赤子であった男の子も、もう大きくなったろうと思うと、その成人ぶりも見たくなった。
お作は柳町まで来て、最中の折を一つ買った。そうしてそれを風呂敷に包んで一端何か酬いられたような心持で、元気よく行き出した。
西片町界隈は、古いお馴染みの町である。この区域の空気は一体に明るいような気がする。お作はの垣根際を行いている幼稚園の生徒の姿にも、一種のなつかしさを覚えた。ここの桜の散るころの、やるせないような思いも、胸に湧いて来た。
家は松木といって、通りを少し左へ入ったところである。門からじきに格子戸で、庭には低い立ち木の頂が、スクスクと新しい塀越しに見られる。お作は以前愛された旧主の門まで来て、ちょっと躊躇した。
三十六
門のうちに、綺麗な腕車が一台供待ちをしていた。
お作はこんもりした杜松の陰を脱けて、湯殿の横からコークス殻を敷いた水口へ出た。障子の蔭からそっと台所を窺くと、誰もいなかったが、台所の模様はいくらか変っていた。