Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lee 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) de 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 346.393 caracteres · 692 pantallas

Aozora Bunko

二十四

夜おそく笹村は蓋物を提げて下宿へ還って行った。そして部屋へ入ってランプを点けると、机の上の灰皿のなかに、赤い印肉で雅号を捺したM先生の小形の名刺が入れてあった。笹村は、しばらく机に坐ってみたが、じきに火を細くして寝床へ入った。

上総の方の郷里へ引っ込んでいる知合いの詩人が、旅鞄をさげて、ぶらりと出て来たのはそのころであった。そして泊りつけの日本橋の宿屋の代りに、ここの二階にいることになってから、笹村は三度三度のまずい飯も多少舌に昵んで来た。

中央文壇の情勢を探るために出て来たその詩人は、その時家庭の切迫したある事情の下にあった。自分自分の問題に苦しんでいる二人の間には、話が時々行き違った。

二十四

その詩人が、五日ばかりで帰ってしまうと、その時齎して来た結婚談が、笹村の胸に薄い痕迹を留めたきりで、下宿はまた旧の寂しさに復った。

その結婚談は、詩人と同郷のかなり裕福なある家の娘であった。臥そべっていながら、その話を聞いていた笹村の胸は、息苦しいようであった。

話の最中にその時めずらしく、笹村へ電話がかかって来た。かけ手は、笹村が一、二度余所で行き合わせたぎりで、深く話し合ったこともないある画家であったが、用事は笹村が家を持った当座、九州の旅先で懇意になった兄の親類筋に当る医学生が持って来て、少し運んだところ