Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
宮本武蔵
枯野見
一
枯野見
一
丹波街道の長坂口は、指さして彼方に望むことができる。並木越しに、白い電光かのように眼を射るのは、その丹波境の標高で、また、京都の西北の郊外を囲っている山々の襞をなしている残雪だった。
「火を放けろ」
と誰かいう。
春先なのだ。まだ正月の九日という日である。衣笠のふき颪は、小禽の肌には寒すぎた。チチチチチ野に啼く声も稚く聞えて耳に寒い。人々は、鞘の中の刀から腰の冷えて来る心地がした。
「よく燃えるな」
「火が飛ぶぞ、気をつけぬと、野火になる」
「案じ給うな。いくら燃え拡がっても、京都中は焼けッこない」
枯れ野の一端に放けた火は、音を立てて、四十人以上もいる人々の顔を焦した。焔は、朝の太陽へ、背を伸ばして、届きそうにまでなった。
「あつい、あつい」
と今度は呟く。
「もうよせ」
草を投げる者へ向って、植田良平が、煙たい顔して叱った。
そんなことをしている間に半刻は経っていた。
「もうやがて、卯の刻過ぎじゃないかな」
誰かいい出して、
「さよう?」
期せずしてみなの眉が、陽を仰いでみる。
「卯の下刻。――もはやその時刻だが」
「どうしたろう、若先生は」
「もう来る」