Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
五
大きく暴れると、すぐに死の手が圧しかぶさってくるように惧れもするのであった。
そのくせ大蔵の手は、決して、彼の心臓がつぶれる程、強い力で締めつけているのではない。
やんわりと、膝のなかへ抱えこんで、
「じゃあ、おれの子になるか」
と、まばらな髯を城太郎の頬へ摺りつけていう。
その髯が痛い。
そのやんわりとした力がとても怖ろしい。大人臭いにおいが体を縛ってしまう。
どうしてだろう。城太郎にも分らなかった。危険というだけなら、これ以上あぶない目には何度も出会っているし、それに対しては、むしろ向う見ずな性質なのに、声も手も出ないで、嬰児のように、大蔵の膝から逃げることができなかった。
「どっちだ。どっちがいい?」
「…………」
「おれの子になるか、殺されたほうがいいか」
「…………」
「これ、はやくいえ」
「…………」
城太郎はとうとうベソを掻き始めた。汚い手で顔をこするものだから、涙が黒いしずくになって小鼻のそばに溜っている。
「なにを泣くか。おれの子になれば、倖せじゃあないか。武士になりたければ、なおさらのことだ。きっといい武士に仕立ててやる」
「だって……」
「だってなんだ」