Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
八
「ああ、これで解けた。中堂へ訴え出て、わしの素姓や、わしのことを、悪しざまに告げた者は、おばばであったのだな。健気な老婆のことばと聞き、堂衆たちは一も二もなく信じたに違いない。また、同情もしたであろう……。その結果わしを山から追うことに決め、夜陰に乗じて、おばばを先達にここへ加勢にきたものとみえる……」
「……ウウム、くるしい、武蔵、もうこうなる上は、ぜひもない。本位田家の武運がないのじゃ。ばばの首を討て」
苦悶しながら、お杉はやっとそれだけいった。
しきりと藻がくのであったが、武蔵の力を拒むだけの力すらないのだった。打ちどころも応えたに違いないが、もう三年坂の旅籠をたつ頃から、お杉は風邪をこじらしていて、微熱があったり、足腰が懶かったりして、とかく健康もすぐれなかった揚句である。
その上、下り松へ行く途中、ああして又八から棄てられてしまったことも、さすがに老いの心へ大きな傷手となり、体にも利いていたに相違ない。
「――殺せっ、この上は、ばばの首を斬れ」
と今、彼女がもがいていうのもそういう心理や肉体の衰えを考えてやると、あながち弱者のさけぶ捨てばちな狂言ではなく、真実、事ここにいたったと知って(もうこれまで)という観念のもとに、いっそ早く死にたいと願って、正直に喚いたものかも知れなかった。