Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
一
麓か、上諏訪のあたりに足をとめて、城太郎の姿を探し、お通の消息を知らねばならぬと思うのであったが、なんとなく気が冴えない。
彼は、下諏訪まで足を伸ばした。下諏訪まで行けば温泉がある。そう思ってから急に真っ直に歩いたのである。
湖畔の町は、町屋千軒といわれていた。本陣の前の屋根のある風呂小屋が一ヵ所見えたが、後は往来傍にあって、誰が入浴ろうと怪しむ者はない。
武蔵は、着物を立木の枝に懸け、大小を括り付けた。そして、野天風呂の一つに体を浸けて、
「ああ」
と、石を枕に、眼をふさいだ。
今朝から革ぶくろのように硬ばっていたみずおちを、そうして湯の中で揉んでいると、眠くなるような快さが血管を繞ってくる。
陽が傾きかけている。
漁師の家でもあろうか。湖畔の家と家の間から見える水面には、茜色の淡靄が立って、それも皆湯のように感じられる。二、三枚の畑を隔てたすぐそこの往来には、馬や人間や車の行き交う物音が頻繁であった。
と――その辺の油や荒物を売っている小やかな店先で、
「草鞋を一足くれぬか」
と床几を借りうけて、足拵えを直している侍がいっているのである。
「うわさはこの辺へも聞えておろう。