Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
五
「もうよい。北条どの。さあ、逃げよう」
武蔵はいって、新蔵の体を、小脇から下ろし、ためらう彼を促して、なおも彼方へいそぎ出した。
無法者たちは、初めて、
「あっ、逃げたっ――」
と、われに回って、遽にまた、気勢を改め、
「逃がすな」
と、坂の下から、追い上がりながら、口々に罵った。
「弱虫」
「口ほどもねえぞ」
「恥を知れ」
「それでも侍か」
「よくも、部屋がしらの太左衛門を、お濠へ叩っこんだな。返せ、野郎」
「もう武蔵も、相手だ」
「ふたりとも、待てっ」
「卑怯者め」
「恥知らずめ」
「駄ざむらいめ」
「待たねえか」
――その他、あらゆる罵詈讒謗がうしろから飛んで来たが、武蔵は見向きもせず、また、北条新蔵にも、足を止めることを許さず、
「逃げるに如くはない」
と、呟いて逃げ出し、
「逃げるのも、なかなか楽ではない」
などと笑いながら、足のかぎり、彼らの追撃から遁れてしまった。
振りかえってみると、もう追って来る影も見えない。病後の新蔵は、駈けただけでも、蒼白になって、息を喘っていた。
「お疲れだな」
「い……いえ……さほどでもありませぬが」
「彼らの罵詈に甘んじて、残念だと仰っしゃるのか」