Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
二
梢の声――雲の声――藪の声――草の声――あらゆるものが戦き戦いている風の中に、その時、
(下り松へ行けっ!)
何者かが、遥かから、声をからして教えていた。
近くの小高い丘の上だ。手頃なところを選んで、そこの岩に腰をかけていた佐々木小次郎が、いつのまにか岩の上に突っ起ち、三道の藪や木蔭に沈んでいる吉岡勢へ向って、
(わういッ、おおういっ。――下り松だっ、下り松へ出会えっ!)
二
鉄砲の音だった、その時、人々は強い音波に耳を蓋された。
かたがた小次郎の声も、大勢のうちの誰かには聞えたはずである。
――素破っ。
動揺めいた大竹藪や、木蔭や岩蔭や、あらゆる物蔭から蚊の湧くように躍り出した三道の伏勢が、
「ヤ、ヤ?」
「既にっ」
「追分、追分」
「出し抜かれているぞッ」
道の三方から各※(二の字点、1-2-22)、二十名以上の人が、地へ臨んで集まる奔流のように疾駆し出した。
武蔵は今――鉄砲の轟音と同時に、下り松の幹をくるっと自分の背でこするように動いた。弾は彼の顔から少し外れて樹の幹へぶすんとあたった。――そしてその前に槍と刀を交ぜて七本の切ッ先を揃えたまま対峙していた、七名も、ズズズズズと彼の動きに釣られて樹の幹を廻ってゆく。