Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
――と。いきなり武蔵は、七人の左の端にいた男へ、青眼の剣を向けたままだッと駈け出した。その男はしかも吉岡十剣の中の一人だった小橋蔵人であったが、余りにも迅い恐ろしい彼の勢いに、
「――あ、あッ」
浮き声をあげて、思わず、片脚立ちに身を捻じ交わすと、武蔵は、空間を突きながら、そのままタタタタッ――と果てしなくなお駈け出して行く。
武蔵の背を見て、
「やるなッ」
と、追い縋り、飛びかかり、一斉に斬り浴びせようとした刹那、彼らの結合はばらばらになり、彼らの個体もでたらめに構えを失っていた。
武蔵の体が、分銅のように刎ね返って、真っ先に追って来た御池十郎左衛門の横を撲った。十郎左衛門は、直感に、
(彼の詭策)
と覚って、追い足にふくみを持っていたので、武蔵の刀は、彼の反り返った胸先を横へ掠めたに過ぎない。
けれど武蔵の刀は、世の常の術者が振り込むように、一振一刀――つまり斬り損じた刀の力がそれなり空間へ失われて、また二の太刀を持ち直して斬り込むというような――そんな速度ののろいものではなかったのである。
彼は、師というものにつかなかったために、その修行の上で、損もし苦しみもしたろうが、師を持たないために、益もあった。