Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
五
――その一瞬の間に武蔵のすがたは見る影もなく変っていた。鬢止めに締めている額の布は、汗と血で、桃色に滲んでいた。髪は崩れてその血と汗に貼りついて見える。ために、彼の形相は、たださえ恐ろしくなっているところへ、魔王の隈を描いたように、世にもあるまじき物凄さに見えるのだった。
「…………」
さすがに、呼吸も全身でつき始めてきた。黒革胴のような肋骨が大きな波を打つ。袴はやぶれ、膝の関節を一太刀斬られていた。その傷口から柘榴の胚子みたいな白いものが見えている。破れた肉の下から骨が出ているのである。
小手にも一箇所かすり傷を負っていた。さしたる傷ではないらしいが、滴る血しおが胸から小刀の帯前まで朱に染めているので、さながら満身が纐纈染になってしまい、墓場の下から起ち上がった人間でもあるかの如く、見る者の眼を掩わしめた。
――いや、それよりも酸鼻なのは、彼の刀にあたって、処々に唸いたり、這ったりしている傷負や死人だ。その山裾の原へ彼が駈け上がり、七十名もの人間が、どっと彼へ襲撃して行ったと思う途端にもう四、五名が斃れていた。
吉岡方の傷負が斃れている位置は、決して一所にまとまっていなかった。