Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
六
風に吹かれた木の葉虫のように、大地をごろごろと三つほど転がったまま、伸びてしまったのが又八だった。
六
背なかの鞘へ、三尺もある白刃が吸われて、ぴいんと、辷り落ちたとたんに高い鍔鳴がひびく。
――と、小次郎はもう、呼吸のない又八などには、眼もくれていなかった。
「――朱実っ」
樹の下へ寄って、こう叫びながら梢を見あげた。
「朱実、降りておいで。……もうあんなことはしないから降りておいで。……おまえの養母の亭主だったという男をつい斬ってしまった。降りて来て、介抱してやってくれ」
樹の上からは、いつまで、なんの声もなかった。こんもりと松葉の闇は濃いのである。小次郎はやがて、自分も樹の上へよじ登って行った。
「……?」
朱実はいなかった。いつのまにか隙を見て樹をすべり落ちるなり逃げてしまったものと見える。
「…………」
梢に腰をかけたまま、小次郎はしばらくそこにじっとしていた。颯々とふく松かぜの中に身を置いて、逃げた小鳥の行方を憶っているらしかった。
(どうして、あの女は、おれをああ怖がるのだろうか?)
小次郎には、それが分らなかった。自分で出来るだけの愛を彼女には注いだつもりだからである。