Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
と、奥へ案内する。
「然らば」
と、武蔵は従いて行ったが、元よりさして広い家でもない。茶の間の縁を突き当って五、六段のはしごを上がると、八畳の一室があり、窓のわきの杏の梢が、若葉に夜露をもっていた。
「あれが、研をする仕事場なので――」
と主が指さす小屋の屋根は、牡蠣の貝殻で葺いてあった。
いつの間に吩咐けたのか、耕介の女房がそこに膳を運んで来て、
「まあ、一献」
と、夫婦してすすめる。
杯が交わされてからは、客でもなく主でもなく、膝をくずして、お互いに胸襟をひらき合ったが、話は、刀のほかには出ない。
その刀のこととなると、耕介は眼中に人もない。青い頬は少年のように紅らみ、口の両端に唾を噛み、ともすれば、その唾が相手へ飛んで来ることも意に介さない。
「刀は、わが国の神器だとか、武士のたましいだとか、皆口だけでは仰っしゃるが、刀をぞんざいにすることは、侍も町人も神官も、みな甚だしいものですな。――てまえは或る志を抱いて、数年間、諸国の神社や旧家を訪れ、古刀のよい物を観ようものと歩いたことがありますが、古来有名な刀で満足に秘蔵されている物が余りに尠ないので悲しくなりましたよ。