Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
白い汗止めの鉢巻には、一滴の血もついていなかった。袂にも、袴にも――辺りの草にも血らしいものはこぼれていない。けれど、眉も眼も苦しげに塞いだまま、清十郎の唇は野葡萄のような色をしていた。
「……息は、息は、あるのか」
「かすかに」
「おいっ、た、たれかはやく若先生のからだを」
「担うのか」
「そうだ」
ひとりが背を向けて、清十郎の右の手を肩にかけて立ち上がろうとすると、
「痛いっ……」
清十郎が苦悶して、叫んだ。
「戸板、戸板」
と、いいながら、三、四名の者が、並木を駈け出して行ったと思うと、やがて附近の民家から、雨戸を一枚外して持って来た。
清十郎の体は、戸板の上へ仰向けに寝かされた。呼吸をふき甦してからというものは、苦痛にたえかねて暴れまわるので、やむなく、門下たちは帯を解いて、彼の体を戸板にしばりつけ、四隅を持って、葬式のように暗然とあるき出した。
戸板が割れるかと思うほど、清十郎は、その上で足をばたばたさせながら、
「武蔵は……武蔵はもう立ち去ったか。……ウウム、痛い。右の肩から腕の付け根だ。骨が、砕けたものとみえる。……ウウムたまらぬ。門人衆、右の腕を、付け根から斬り落してくれ。