Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
四
朝でも晩でも、道場に出ている時でも、伝七郎の体から酒のにおいの消えたことがないことは知っているが、こん夜のような場合――やがて一族一門の浮沈を賭して当ろうとする敵を待つ今のわずかな間に、その酒が、伝七郎の戦闘力に、利となるか、不利となるかを、門弟たちは、いつもの酒とちがって、熟考せずにいられなかった。
四
この雪に、凍えた手肢をして、太刀を持つよりは、少しぐらいの酒ならば、体に容れたほうが、かえってよかろうと考える者のほうが多かった。
「それに、御舎弟が、ああいいだしたものを、その気持をこじらせるのは、なおよろしくない」
こういう尤もな意見もあって、門弟の中の二、三が駈け出して行って、間もなく酒を買って来た。
「やあ来たな、どんな味方よりも、以上の味方は、これだ」
焚火のぬく灰にあたためた酒を、伝七郎は茶碗につがせ、こころよげに飲んでは、争気に満ちた息を吐く。
いつものように、量をたくさんに参られてはよくないがと、側にいてはらはらしている者もあったが、そんな心配までに及ばず、伝七郎は心得ていつもより少なくしか飲まなかった。自己の生命にかかわる大事を、すぐ前にひかえているので、豪放には装っていても、ここにいる誰よりも肚の底から緊張しているのは、やはり彼自身だった。