Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 508 883 caractères · 1017 écrans
その熱情をもって武蔵をうごかし、その涙をもって二人きりで、浮世の外に住むことも出来ないことはないと信念していたのであった。
けれど――会ってみると、なにもいえない彼女だった。そんな熾烈な望みはおろか会わない間の辛さ、世路にまよう身のかなしさ、武蔵の情ないこと――なに一つとしていえないのだった。胸先まで突き上げてくるそれらの感情を、ふと思い切っていおうとすれば、ただ唇が顫いてしまうだけで、よけいに胸はつまり涙は眼をふさいで、もし、武蔵もそこにいない桜月夜の下でもあるならば、わッ……と大声あげて、嬰児のように泣き転び、せめてこの世にいない母にでも訴える気もちで、心の済むまで、泣き明かしていたいと思うほどだった。
「…………」
どうしたものだろう。お通もいわず武蔵もいわず、こうしている間に時刻はいたずらに過ぎてしまう。
――はや暁に近いせいか、間の抜けた啼き声をこぼして、帰る雁が六、七羽、山の背を越えて行った。
八
「雁が……」
武蔵はつぶやいた。この場合にそぐわない、取ってつけたような――と知りながら、
「お通さん、帰る雁が啼いてゆくなあ」
といった。
それを機に、